バイオリンは何歳から?

2歳から始めないと遅いって聞いたけど…

バイオリンは「幼いころから始めないといけない」と言われることが多い楽器です。著名なバイオリニストが2歳や3歳からバイオリンを弾き始めたとか、教育メディアが小さいうちからのレッスンを推奨しているとか、いろいろな条件が重なってそういう雰囲気が作られているのでしょう。

 

実際、就学前から小さな楽器で驚くほど上手に弾く子もたくさんいます。しかし、習い始めるのが早いほど上達が早く有利なのかといったら、必ずしもそうとは言えません。

 

2歳や3歳でバイオリンに興味ある子でも、バイオリンの「レッスン」に興味があるわけではありません。ただおもちゃとして遊びたいだけ、バイオリンの真似事で楽しみたいだけ、ということが大半です。だからレッスンに参加しても、30分のレッスン時間のうち、5分バイオリンを構えられたら御の字、場合によってはグズるばかりで一度も楽器に触ることなくレッスン室を後にする・・・なんて光景も珍しくありません。まだ集中力がない年齢なので、2歳や3歳の子どもにはバイオリンそのものを教えるよりリトミックのような音楽遊びを中心にする教室が多いです。

 

バイオリンはとても繊細な楽器です。表についている部品はねじ止めも糊付けもされておらず、すべて張力と摩擦のバランスで装着されています。本来あるべき姿と違う力が加わればすぐにバランスを崩して修理が必要な状態にもなりますから、子どもの手で壊せてしまいます。そうすると親としては「ここは触ったらダメ!」と注意せざるを得ないのですが、2歳や3歳ではなぜ触ってはダメなのか分からないまま「ダメ!」と怒られ続け「楽器=危険なもの、触ると怒られるもの」と認識してしまいます。

 

これでは楽器の扱いを覚えるどころか、楽器を避けるようになったり、興味を失ったり、むしろバイオリンから遠ざかってしまいます。

 

「ここは手で触らないようにしようね」という話を納得できるのは、早くても4歳くらい。年齢とともに禁止事項も理解できるようになりますが、成長には個人差があるので5歳でもまだおもちゃとして遊んでしまう子もいます。

 

バイオリンを大切に扱えたとしても、難しい点はまだあります。

 

バイオリンを演奏するときは楽器を左肩と左顎でしっかり挟んで構えます。バイオリンは、正しく構えないと正しい音を出せない楽器です。ピアノなら鍵盤をたたけばすぐに正しい音を出せますが、バイオリンは最初の1音を出すまでに30分以上かかることは普通です。年齢が低ければ、30分では最初の正しい音が出せないこともあります。2歳や3歳だと、30分もずっと同じことに取り組むのは、かなり難しいでしょう。

 

バイオリン本体の持ち方ができるだけではまだ不十分です。右手で弓を正しい方向に操作する必要があります。弓にも意識を集中していないと、すぐに弓が流れてズレてしまいます。メロディを演奏するには左手の指が弦を押さえて音を変えますが、弦の正しい位置を押さえないと音程が外れてしまいます。ここまで実際にやってみると、大人でもかなりの気力と体力を要します。楽器の構えや弓を常に意識しなければならないので、脳もフル稼働です。

 

こう説明すると、年齢が低いほど導入が難しい楽器だということがお分かりいただけるでしょうか。

 

バイオリンを上達させるためには、日々の練習が欠かせません。練習しなければ新しいことはできるようになりませんし、いつまでも上達しなければつまらなくなってレッスンをやめてしまうでしょう。
 

ですから「何歳から」という一律の目安ではなく、「毎日の練習ができるようになってから」と判断することを、当レッスンではお勧めしています。練習時間は1日10分でいいのですが、これを毎日続けられるか、少し考えてみてください。「親がやれと言うから・・・」ではなく「練習したらバイオリンきるようになって楽しい!」と思える年齢で始めることを、子どもの個性を良く知る大人が判断してあげてほしいと考えます。

 

子どもの個性も様々なので、お友達が3歳から始めたからと言って、同じ3歳で始めてもバイオリに興味を持てなかったり、集中力が続かない子もいます。早くても3歳半から4歳、5歳くらいでしょうか。5歳でもまだバイオリンを楽しめない子も多数います。楽器のお手入れから弾き方までひととおり体験して「楽しかった!もっとバイオリン弾きたい!」と言えるのは5歳だと半数ほどですから、6歳でも遅いなんてことはありません。

 

小学生では遅い?と不安に思うかもしれませんが、そんなこともありません。むしろ小学生のほうが少し難しい説明もしっかり理解できるので、10歳すぎて始める場合は低年齢の子に比べたらずっと効率良く練習できます。

 

バイオリンは、習い始めて1年や2年で簡単に弾けるようなものではなく、長く続けてようやく理想の美しい音が出るようになります。子どもの成長の過程はそれぞれですから「何歳から」という線引きではなく、その子にとって楽しく始められる時期を判断してください。
 
 

一概に「早ければいい」ではないのです。